「成分」を追いかけるほど、美肌から遠ざかっていく理由。
私がハマった罠は、知識だった
エステティシャンとして、化粧品の成分は一通り頭に入っています。
レチノール、セラミド、ビタミンC・・・
——それぞれの働きも、作用する仕組みも、わかっているつもりでした。
だからこそ、更年期で肌が揺らいだとき、私がしたことは「より良い成分を探す」ことでした。
私はコロナ禍の時間を使って、高濃度成分で話題の韓国コスメを試し始めました。
効果がぼんやりとしていると、「濃度が足りないのかも」「別の成分の方が合うかも」と、また次を探す。
高級美容液、デパートのファンデーション。気づけばかなりのコストをかけていました。
でも、「これだ」という変化は来なかった。
専門知識があったはずなのに。
いや、正確には——知識があったからこそ、視野が狭くなっていたのだと、後から気づきました。
SNSが作り出す「成分信仰」
私だけではありません。
サロンでお客様とお話していると、同じ現象が見えてきます。
「SNSでインフルエンサーが勧めていたから」「皮膚科の先生がYouTubeで紹介していたから」と、
新しい成分を試しては次へ、また次へ。情報は豊富なのに、肌の悩みは解決しない。
今の時代、成分の情報はどこにでも溢れています。
「レチノールで若返る」「ビタミンCでシミが消えるかも」
——どれも全くの嘘ではありません。
でもそこに、決定的に抜け落ちている視点があります。
**「その成分が、今のあなたの肌に合っているか」**という問いです。
高濃度の成分は、土台が整った肌には効果的です。
でも乾燥やゆらぎがある肌に使えば、刺激になるだけです。
更年期を迎えた肌は特に、ホルモン変化で皮脂バランスが崩れ、
バリア機能が低下しています。
そこに高濃度の成分を重ねることは、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。
専門家も、一般の人も、同じ罠にはまる
面白いことに、私のような専門家と、情報過多の消費者は、まったく同じ構造の罠にはまります。
専門家は「成分を知っている」から成分を信じすぎる。
一般の方は「成分の評判を聞いた」から成分を信じすぎる。
どちらも「成分」という一点に集中するあまり、本質的な問いを素通りしてしまう。
「今の私の肌は、何を必要としているのか」
この問いに立ち返れたとき、私の迷走はようやく終わりました。
成分より先に、することがある
結局私がしたことは、引き算でした。
成分を増やすのではなく、スキンケアをシンプルに戻す。
洗い方、触れ方、重ね方という基本を見直す。
肌が「受け取れる状態」を整えることを、成分選びより先に考える。
地味です。華やかさはありません。でも肌は、ちゃんと応えてくれました。
どんなに優れた成分も、届く土台がなければ意味がない。
これはエステティシャンである私が、自分の肌で学んだことです。
あなたが悪いのではない
情報が多すぎる時代に、成分を追いかけてしまうのは自然なことです。
売り場でも、SNSでも、「何を足すか」しか提案されないのですから。
でも本当は、足す前に確認することがある。
それは美肌のいちばんの近道。
次回は、エステとセルフケアの役割分担について話します。プロにしかできないことと、毎日の家でのケアで本当に大切なことを、整理してみます。
